そのとき、聞き覚えのある叫び声を合図に、突如目の前に立ちはだかった大柄の男が陸の左腕へ掴み掛かった。

「うぁっ…!!」

「陸!!」

痛みに怯んだ隙を突いて、大男が陸の身体を壁に勢いよく叩き付ける。

「く、は……っ」

その弾みで、陸の手と手が離れてしまう。

「陸っ!!いやっ…陸を放して!!」

陸を押さえ付けた男の腕を振り解こうと抵抗するものの、晴海の力では全く相手にならない。

「残念だったなあ、晴海…そう簡単に逃がすかよ」

愉しげな高笑いが後方からゆっくりと近付いてくる。

振り向いた視線の先に、大勢の役人を引き連れた領主子息の姿があった。

「卑怯者…!!」

その、他人を見下した目付きの男を精一杯睨み付ける。

「何とでも言えよ…俺は痛くも痒くもない。それに、そいつを先に捕まえればお前はこれ以上逃げない」

「晴っ…駄目だ…!俺は大丈夫だから、先に逃げろ!!」

陸が苦しげに叫び声を絞り出すと、秦は不快げに片眉を吊り上げた。

「…そいつを黙らせろ!」

「!止めてっ!!」