後方で身構えていた役人三人は一瞬呆然としていたが、慌てて後を追ってきた。

「陸、やったね!此処まで来ればもうすぐ港に出る筈…」

「…っ」

窮地を切り抜けて幾分安堵したが、陸が小さく呻き声を上げてぎくりとした。

「陸、どうしたの?!」

慌てて声を掛けるが、陸は前を向いたままで表情が見えない。

「大丈夫…今まであんまり動いてなかったから、身体が鈍ってるんだよ」

――違う。

慶夜に負わされた四肢の怪我は、まだ殆ど治っていない。

きっと身体を動かす度に、その衝撃が傷に響いているのだ。

こうして走っているだけでも、身体に多大な負担を強いているのかも知れない。

そういえば先程、両腕の袖口から見覚えのない真新しい包帯が見えた気がしたが――見間違いだろうか。

今はそれを確かめている余裕はないが、何にせよ陸が満身創痍であることに変わりはない。

「陸、お願い…無理しないで」

「大丈夫、晴の嫌がることはしないよ。それに、仄さんとも約束した」

「…うん」

そう言ってくれても陸が心配で、繋いでいる掌に一層力を込めた。

「――野郎の左腕を狙え!奴は腕に傷を負ってるぞ!!」