路地は人が細身の人間でも二人並ぶと狭いくらいの道幅。

両脇に抜けられそうな道はなく、見渡す限り石塀が続いている。

塀は陸の背丈よりも幾分高さがあり、これを乗り越えて逃げるのは難しいだろう。

「大人しくしろ!無駄な抵抗はしないことだ!!」

後ろに三人、前に四人の役人が立ちはだかり、じりじりとその間を詰めてくる。

陸はこちらに身を寄せると、声を潜めてこそりと耳打ちした。

「…晴、俺が正面の道を開ける。そしたらその隙に通り抜けるんだ」

「陸…?」

何をする気なのか、と問うより早く、繋いでいた掌がするりと解けて、陸は前方の役人たちの目前に飛び込んだ。

「なっ!?」

陸は一番手前にいた役人を蹴り飛ばすと、次に立っていた男の喉元を肘で打ち据えた。

「がはっ!!」

「ぐぁあっ…!!」

体勢を崩した前の者に巻き込まれる形で、役人たちは将棋倒しに後方へ縺れ込む。

「晴っ、早く!こっちだ!!」

「!」

陸が再びこちらに伸ばした手を取って、倒れた役人たちの脇を擦り抜ける。

「まっ…待て!!」