「私の可愛い子供たち。どうか、無事で」

「かあさん」

陸は仄から身を離すと、その眼を真っ直ぐに見据えた。

「…仄さん、晴のことは俺が絶対に、守るから」

「陸は頼もしいね。でも無茶はするんじゃないよ」

そう言って柔らかく笑った仄の指先が、晴海と陸の頬を撫でる。

取り急ぎ、必要最低限の身支度を整えていると――俄に玄関の外が騒がしくなってきた。

大勢の人間の足音と、耳を劈(つんざ)く警笛の音が、辺りに響く。

「…!」

「皆さんおいでなさったようだ。早く行きな、あたしたちのことは心配ない」

仄の言葉に、傍らの夫婦も揃って頷く。

まだ迷いを断ち切れず躊躇して陸のほうを振り向くと、陸は意を決したように行こう、と小さく呟いた。

「陸…」

それに応えて頷き返すと、どちらともなく手を繋ぐ。

これ以上仄の顔を見てしまうと、胸が苦しくて息が詰まりそうで。

だから、振り向かずに駆け出した。

居間を抜けて廊下に出た瞬間、扉を開けろ、と叫ぶ役人の怒声が背後から追い駆けてきて心臓が跳ね上がる。

「…っ!」