「……姉ちゃん」

風弓の視線は、陸の腕の中でぐったりとしている晴海の姿に注がれていた。

「!」

「…また、だ……」

風弓の声は消え入りそうな程に小さく、震えていた。

「俺のせいで…!!…っ、俺はっ…なにを…!!」

へたりと地面に座り込んでしまった風弓は、晴海の傍へと急いで縋り付いた。

「姉ちゃん…姉ちゃんっ!!」

幾ら呼び掛けても晴海は瞳を閉ざしたままで――息をしていなかった。

そのことに気付いた風弓は、酷く取り乱した様子で声を荒げる。

「姉ちゃんはっ…!小さい頃に溺れて…水が、怖いんだっ……俺のせいで、川におちて…っなのに、おれ、俺はなんてこと…っ」

「風弓、落ち着けっ!弱ってるけど、まだ脈はある」

がたがたと戦慄する風弓を、宥めるように声を掛ける。

「風弓、頼む…!晴を助けたいんだ、お前の力を貸してくれ!」

「…おれ、の……っ?」

「彼女が吸い込んだ水を、お前の能力で体内から取り除くんだ。そうすれば息が出来るようになる」

今考え得ることで、一番効率的な方法はそれだった。

そして今、この場でそんなことが出来るのは、水を操る能力を持つ風弓しかいない。