見渡す限り延々と同じ景色が続く濁った海の中で、方向を見失わないための標(しるべ)は入り口から射し込む陽の光だけだった。

あの光のお陰で、辛うじて自分が下へと進んでいるのだと判る。

(晴…!)

水を掻き分けて進んでゆくにつれて、まだ癒えていない四肢の傷が痛む。

しかし、そんなことを気に掛けている余裕はなかった。

(晴、何処だ…!!)

風弓の言う通り、だ――

いくら人より秀でた能力を持っていても、結局は何の役にも立ちやしない。

寧ろこの力のせいで、優しかったあの人を死なせてしまった。

風弓を悲しませて、残酷なことをさせてしまった。

居場所をくれた晴海を、巻き込んでしまった。

こんな力、なければ良かった。

こんな自分など、存在しなければ良かった。

そうすれば、誰も悲しませずに済んだのに。

けれど、今はせめて目の前にある大切なものだけでも、この手で守りたいんだ――

(晴…頼む、間に合ってくれ…!)

そのとき、視界の端で陽の光が何かに反射した。

(…!?)