「そん…な……」

「お前が信じなくともな、それが事実なんだよ…!親父は望んでもない場所で突然命を奪われたのに、お前は何も知らずにのうのうと外の世界で生きてる…っお前のせいで、お前に関わったせいで…!お前が親父を殺したんだ!!」

激昂した少年が翳した掌から、無数の水の刃が放たれる。

「くっ!!」

能力が使えない今は、両腕を盾にしてその攻撃を凌ぐことしか出来なかった。

「ふっ…はははっ…!無様だな、陸!!そのお前が今じゃただの人間同然…自分の身すら満足に守れやしない」

縦横無尽に切り裂かれた両腕の傷口から、血が滲む。

一つ一つの傷は小さいものの、数が多い。

「…っ」

苦痛に顔を顰めた陸に、少年は以前の彼からは想像出来ない程酷薄な笑い声を上げた。

「もっと苦しめよ、陸…!俺が苦しんだ以上にな!!」

そんな少年に、何も言い返すことが出来ない。

あのとき――この少年の父親から月虹に残ると告げられた瞬間に、陸は彼が何らかの罪に問われるであろうことを危惧した。

彼もそれを、覚悟していた。

だから一緒に逃げようと、何度も懇願した。

しかし彼は“自分の立場ならこの件の咎を受けても、最悪の事態は免れる”と言って首を振った。

何より息子を置いては行けない、そう言う彼に背中を押されて月虹から脱出した、のに――

「俺の、せいで…」