「慶夜や雪乃から聞いたんだよ、お前を匿ってる女のこと…じゃあもしその女の身に何かあったら、お前は月虹から逃げたことを後悔するだろ?」

「…!」

他の能力者たちと同じ、虚ろな瞳と残忍な笑み。

陸が知る限りでは、彼は洗脳を受けていなかった筈なのに、まさか――

「馬鹿なっ…お前がこんなことをしてまで俺を連れ戻すだなんて、充(みつ)さんが許す筈ないのに…!」

「親父のことを気安く口にするな!!」

件(くだん)の恩人のことを口にした途端、少年は激しい剣幕で陸の言葉を遮った。

「なっ…」

それに、少年が最初に口走った言葉の真意は――

「まさか、充さん…あの人に何かあったのか…?」

「煩い…!お前のせいだ、陸…!!お前のせいで、親父がっ…お前を逃がしたせいで俺の親父は死んだんだよ!!」

「――え…?」

あの人が、死んだ…!?

「…親父はお前を逃がした責任を問われて、月虹の連中に殺されたんだ…!!」

殺された――自分を、月虹から逃がしたせいで?

「そんなっ……嘘だっ!!だって充さんは月虹の中でも地位のある人なんだから……そんな筈っ…」

「月虹にとっては、お前の存在は親父を失う以上の価値があるってことだろ」

信じ難い話に動揺を隠せない陸とは対照的に、少年は皮肉げな笑みを浮かべて淡々と述べた。