――あなたは、誰?

どうして私のことを呼んでるの?

どうして、泣いてるの…――?

何処かで聞き覚えのあるような、幼い少年の呼び声。

その声の主が誰だったのか思い出そうとしても、水中に揺らぐ泡沫(うたかた)のように、記憶が浮かんでは消えてしまう。

『おれがまもるって、やくそくしたのにっ…』

(…!)

ああ、そうだ。

ずっとずっと自分が小さかった頃に――前にも、こんなことがあった。

『はるちゃん、しなないで…!』

(この声は…――)

ぱちんと泡が弾けるように甦った記憶と入れ替わりに、意識は急速に遠退いていった。


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