自分の身に起きている出来事に驚き戸惑っていると、がくんと水の中に身体が引き込まれた。

「あ、ぁ…っいや…!!」

「晴っ…晴!!」

陸は口惜しげに行く手を阻む水壁を叩きのめしたが、壁は一切何の変化も起こらない。

「陸…っ!」

そうしている間に、晴海の全身は一気に水溜まりの中へと引き摺り込まれた。

――引き込まれた先は辺り一面、水で満たされた空間だった。

(苦しい…――!)

ごぼごぼと水泡を纏いながら、見えない力に引っ張られているかのように身体が沈んでゆく。

この空間には底があるのか否か、全く判らないが、見渡す限りの景色は上も下も真っ白で何も見えない。

(冷たい、怖い――)

一体、何が起きているのか理解出来ず、水への恐怖心から身が竦む。

それが息苦しさと相俟って、次第に意識が混濁し始める。

『――はるちゃん…』

すると、また遠くであの声が聞こえた気がした。

『はるちゃん、はるちゃん…!』

(泣い、てる…)

『どうしよう…おれのせいだ…!はるちゃんっ…!!』