突如現れた水壁は、晴海と陸との間を隔てるように、上下左右、見渡す限りに広がっている。

陸が咄嗟に向こう側から水壁へ掌を叩き付けたが、ぱしゃんと飛沫と波紋が起きるだけで通り抜けることは全く出来ない。

「ゃっ…」

ひやりとした冷たい水の感触に、ぞくんと背筋が凍る。

眼前の景色が水に覆われ、まるで水中にいるかのような錯覚に陥った。

「くそっ…晴、大丈夫か?!」

「り、く…」

息が詰まって、上手く声が出せない。

怖い――

覚束ない足取りでふらりと水壁から後退りすると、何かに足を取られてよろめいた。

「え…」

足元へ視線を落とすと、更に俄には信じ難い光景が飛び込んできた。

「っ晴、俺が裏口に回ってみるからそれまで…」

「い、やぁっ!!」

「晴?!」

家の中である筈なのに、足元に大きな水溜まりが出来ていた。

更にどういう訳か、その水の中に、片足が脛の辺りまで浸かっている。

「なに、これっ…!!」