『……、…』

そのとき、不意にあの呼び声がほんの微かにだが聞こえてきた。

「!」

「晴、どうしたの?」

突如身構えた晴海の様子に、陸が怪訝そうに首を傾げる。

「陸、今の…っ」

「え?」

動揺を隠せぬまま声を上げると、陸はきょとんと目を瞬いた。

「あの、陸はっ……今、何か…聞こえなかった?」

「いや…何も聞こえないよ」

やはり空耳、なのだろうか。

それにしてはやけに落ち着かない気分になる。

そうだ、先程も同じ声が聞こえたことや京に助けられたことを話しておかないと。

「でも陸、わたしねっ…」

だが半端に口にし掛けた言葉を、咄嗟に飲み込んだ。

目の前の様子が水に滲むように――いや、実際に目の前が薄い水の壁に覆われたのだ。

「み、ず…?!」

「晴!!」