「わ、私…?」

どうして、自分なんかが――

「俺のことを救ってくれたのは、晴だよ」

困惑していると、陸の両手に頬を包まれさらりと撫でられる。

「陸…」

「晴が俺に色んなことを教えてくれたんじゃないか。これまで俺が知らなかった言葉や、気持ち」

「気持ち?」

「楽しい、悔しい…守りたい。俺は今まで、言葉を知ってても実際そう思ったことや感じたことなんて一度もなかった」

出逢った頃は殆ど笑わなかった、陸。

こうして笑ってくれたり、自分の話をしてくれることもなかった。

「晴と出逢って、一緒にいて、俺は初めてそういう気持ちになれることを知ったんだ」

「本当に…?私、陸の力になれてる?」

不安げに問うと再び、陸に頭を撫でられた。

「なってるよ、凄く」

「!…良かった」

たとえ、今の言葉が気を遣ってくれた返答だとしても。

陸の口からそう言われたことが嬉しい。

今まで一緒に過ごしてきた中で、陸は一体どんなときに嬉しいと思ってくれたのだろう――