「しつこい男は嫌われるよ?」

青年は優しげな笑顔を浮かべながら、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。

「っ黙れ!俺の邪魔をするなら容赦しねえぞ!!」

すると熱(いき)り立った秦は、晴海の腕を解放して青年に掴み掛かろうと向かってゆく。

「反省の色はなし、か」

青年は残念そうに溜め息をつくと、つと目の前に掌を翳した。

「何の真似…、…っ?!」

すると秦の身体が、突然金縛りに遭ったかのように硬直する。

「ごめんね。だけど女性に対して暴力を振るうような男には、僕も容赦しないよ」

青年は不意に笑顔を打ち消して、秦を冷たく一瞥する。

その直後に、青年の周囲が渦を巻いた白い光に照らされた。

(風…?!)

「――行くよ」

青年の声を合図に、突風の吹き抜ける轟音が辺りに響き渡り、秦の身体が後方に吹き飛ばされた。

「ぐわぁっ!!」

「!」

巻き上がる砂埃を両腕で防ぎながら、晴海はあのときの光景をふと思い出す。

まるで陸と初めて出逢ったときの――あの日の再現を見ているようだ。