「っ…何、するの…?!」

「あの野郎の話なんかこれ以上出来ないようにしてやるよ!!」

秦が何をしようとしているのか――その意図に気付いて懸命に足掻く。

「や…っ触らないで…!!」

「無駄な抵抗するなよ、素直に俺を受け入れろ…!」

「嫌っ、秦なんか大嫌いっ!!」

「ちっ…!!」

いつになく強気な姿勢で抵抗して見せると、秦は悔し紛れに右手を思い切り振り上げた。

「っ!」

殴られる、そう思い目を閉じて身構えた瞬間――

「女の子に力ずくで迫った挙句、手を上げるなんて最低だね」

涼やかな声が割って入って、晴海と秦はその声がしたほうを一斉に振り向いた。

「貴様、はっ…!?」

瞬間、秦が怯えたように身震いする。

(――陸っ…?)

いいや、違う。

一瞬銀髪と見紛えたが、視線の先に立っていたのは白金の髪をした青年だった。

背格好や声質は似ているものの、陸とは別人だ。

秦がびくりと身構えたのも、恐らく彼を陸と見間違えたのだろう。