「全く、最近お前の周りにはあの銀髪野郎や天地姉弟やら、厄介な奴らばかりだったからな」

「っ秦、はなして…!」

必死に抵抗しても、秦はそれを意にも介さず喉を鳴らした。

「久々にこうして顔を合わせたってのに、相変わらずつれないじゃねえか」

顎を捕らえられて無理矢理上を向かされると、秦の顔が間近に迫っていた。

獲物を捕まえて満足げな双眸に見つめられ、ぞくりと背筋に悪寒が走る。

「あんな他所者を匿うのはもう止めろ。あいつはこの前の爆発事件を起こした張本人だぞ」

秦の言葉に、全身から一気に血の気が引いた。

「――っ…何、言ってるの?」

茫然とする晴海に構わず、秦は笑いながら自身の憶測を雄弁に語り続けた。

「気体燃料への引火とか抜かしてる馬鹿もいるが、あれは奴の仕業だろ?俺はあの日、爆発があった広場に向かう奴を見たぜ。その後すぐだ、あの事件が起きたのは」

「っ違う、あれは陸がやったんじゃない!」

激しくかぶりを振って否定すると、秦はそれに苛立ったように舌打ちをした。

「あんなでかい爆発起こせるような化け物染みた力を持った奴、他にいるかよ!!」

「それは…、…っ!!」

勢いに任せて思わず口にし掛けた言葉を、咄嗟に飲み込んだ。

真実を話したところで、それを秦が信じてくれるとは到底思えない。

それどころか陸が月虹から追われる身と知れば、陸の居場所を薄暮に通報するかも知れない。