しかし再び意識を傾けてみても、もう何も聞こえない。
もしかして、家の中だから聞こえ難(にく)いのだろうか。
余り一人で家の外を出歩くなとは言われているが――軒先までくらいなら。
何も一人で長時間出歩くのではない、様子を見てすぐ家の中へ戻れば大丈夫だろう。
皆からの忠告を甘く見ている訳ではないが、何故かやけにあの呼び声が気に掛かってならないのだ。
――そろりと玄関の扉を開いてみるも、周辺には不審な人影は特に見当たらない。
「…大丈夫、かな」
玄関から数歩進み出て、周囲の物音に耳を澄ませてみる。
だが、鳥の囀(さえず)りや風が吹き抜ける音以外、特に何も聞こえなかった。
(やっぱり気のせい、かな…)
暫くその場に佇んでいたが諦めて家の中に戻ろうとした瞬間、突如背後から誰かに腕を掴まれた。
「きゃっ!?」
「――やっと一人になったな、晴海」
引き寄せられた後方へそのままよろめくと、声の主の腕の中に抱き込まれる。
聞き覚えのある低い声に囁かれ、反射的に身が固くなる。
同時に、己の行動の浅はかさを後悔した。
「秦…!!」
耳元で、腕の主が愉しげに笑う。
もしかして、家の中だから聞こえ難(にく)いのだろうか。
余り一人で家の外を出歩くなとは言われているが――軒先までくらいなら。
何も一人で長時間出歩くのではない、様子を見てすぐ家の中へ戻れば大丈夫だろう。
皆からの忠告を甘く見ている訳ではないが、何故かやけにあの呼び声が気に掛かってならないのだ。
――そろりと玄関の扉を開いてみるも、周辺には不審な人影は特に見当たらない。
「…大丈夫、かな」
玄関から数歩進み出て、周囲の物音に耳を澄ませてみる。
だが、鳥の囀(さえず)りや風が吹き抜ける音以外、特に何も聞こえなかった。
(やっぱり気のせい、かな…)
暫くその場に佇んでいたが諦めて家の中に戻ろうとした瞬間、突如背後から誰かに腕を掴まれた。
「きゃっ!?」
「――やっと一人になったな、晴海」
引き寄せられた後方へそのままよろめくと、声の主の腕の中に抱き込まれる。
聞き覚えのある低い声に囁かれ、反射的に身が固くなる。
同時に、己の行動の浅はかさを後悔した。
「秦…!!」
耳元で、腕の主が愉しげに笑う。