陸の様子が何処となくよそよそしいようにも見えるが、回答は至極尤もだった。

自分もあのときは意識が朦朧としていたから、他の言葉と聞き違えたのだろう――そう思いながら、ふと俯いた。

「晴…?」

「…私も能力者なら良かったな。それなら陸を守れるし、みんなの足手纏いにもならないのに」

「いいよ、晴は今のままで。傍にいてくれるって、約束してくれただろ?」

ふわりと頭を撫でられて顔を上げると、陸が優しく微笑んでいた。

「何のために能力者が存在するのか、俺にも良く解らないけど。能力なんてない方が幸せだって……俺はそう、思うよ」

「陸」

陸は低い声色でそう呟いたが、表情は明るいままだった。

この四年間、陸はきっと数え切れない程にそう思ったのだろう。

それでも今は笑っていてくれる。

少しずつ、色々な表情を見せてくれる。

自分が傍にいることで陸の心が僅かでも救われるのなら、今はそれだけで良いではないか――

…たとえ、陸の心が自分に向いていなくても。


 * * *