――助けて、くれた。

こちらとの関わりを拒絶していた青年が、自分を助けてくれた。

晴海は、予想外だった彼の言葉に思わず驚喜する。

「よっぽど早死にしたいらしいな。この俺にそんな嘗めた口を聞く奴は久しぶりだ」

だが次の瞬間、泰が青年に向き直ったのを見て思わず声を張った。

「秦っ、やめて、そのひとに乱暴なことしないでっ…!」

「お前は黙ってろっ!!」

「きゃあっ!」

力任せに振り払われた秦の掌が、頬を強かに打った。

その勢いで、泥水を含んだ地面に倒れ込む。

「っお前…!!」

青年が、憤った表情で泰を睨み付ける。

「煩い!俺に楯突く奴はみんな潰してやる…!喧嘩売る相手を間違えたこと、後悔させてやるよ!!」

下卑た笑いを見せながらそう告げた秦の右手が、次の瞬間――真っ赤な焔(ほのお)に包まれた。

「!」

包まれる、というより秦の掌から、焔が生まれているようだった。

「能力者…?」

青年が独り言のように呟く。