「えっ」

賢夜の言葉に目を丸くして、再び天地を振り向く。

「じゃあ先生は、黎明の国出身?でも髪の色や眼の色が」

「うん、母が樹果出身だから見た目はそっち似なんだよね。だから尚更、晴海ちゃんのお父さんには憧れたなぁ」

「私の父さん…?」

「先輩は黎明人特有の、黄金髪に青灰色の眼だったからね。本当に色んな意味で羨ましかったんだ」

「晴海の父さん、暁の先輩だったの?」

いつの間にか夕夏もいて、興味深そうに天地に詰め寄っていた。

「そうだよ。ちょっと人よりのんびりしたところがあったけど、医学者としてはとても優れた人だったんだ。僕はずっと先輩みたいになりたかった」

「…もしかして晴海の父さん、眼鏡してた?」

「なんで、わかるの?!」

確かに父は眼鏡を掛けていた筈だが、何故父を知らない夕夏がそれを知っているのか。

「暁の眼鏡、伊達なんだ。理由を訊いたら“昔憧れてた先輩の真似”とか言ってたから、まさかと思ったんだけど…」

「ええっ!!」

天地先生が、伊達――!?

呆れたように頭を抱える夕夏を尻目に、天地は少し恥ずかしそうに眼鏡を外して見せた。

「何で言っちゃうのかなぁ、この子は…先輩の娘さんに知られたら恥ずかしいじゃないか」

「だって、暁は眼鏡がないほうが似合ってるよ」