二人は其処で同時に沈黙すると、暫く何も言わなかった。

「…止そう、邪推するだけ無駄だよ」

再び溜め息を漏らしながら、夕夏は辿り着いた診療所の扉を少々乱暴に開け放った。

「暁!暁、今時間空いてる?!」

「夕?どうした、いくら患者さんがいないからって…――晴海ちゃん!?」

驚いて診察室から現れた天地が、賢夜の腕の中でぐったりとしている晴海の姿を認めて声を上げた。

「月虹の追手が来たんだ。かなり強烈な雷喰らわされて、意識もあんまりはっきりしてない。早く診てあげて!」

「解った…夕、扉に休診の札を掛けて。賢、晴海ちゃんをこっちへ」

天地は賢夜を診察室に招き入れると、神妙な面持ちで声を掛けてきた。

「晴海ちゃん、僕が解るか?」

「あまち、せんせ…」

「うん。ちょっと痺れて喋りづらいかい?すぐに良くなるからね。何処か痛いとか胸が苦しいとか、ないかな?」

「へいき、です」

単に感覚も麻痺しているだけなのかも知れないが、特に何処が痛いとは感じなかった。

「そうか。良かった…強くなったね、晴海ちゃん」

「…?」

優しく微笑んだ天地の両手から、金色の光が溢れ出す。

「少しだけ熱いかも知れないけど、我慢してくれるかな」