「誰っ!?」

不意に割って入った低い声に少女は身構えたが、周囲には誰の姿も見えない。

が、晴海の首を掴んでいる少女の腕に、突如焔が灯った。

「きゃああっ?!」

慌てた少女が晴海から手を放した瞬間、雷の結界が消え去った。

支えを失い晴海の身体はそのまま倒れ掛けたが、素早く誰かの腕が身体を抱き止めてくれた。

(陸…?)

「悪い、来るのが遅れた」

支えてくれたその腕は陸よりもがっしりしていて、顔を見るために持ち上げる視点の位置も高かった。

「け、んや……」

「…俺の名前、覚えててくれたのか」

賢夜は少し意外そうに微笑むと、目の前の少女に敵意を込めた眼差しを向けた。

「賢!!良かった、あんたは結界を突破出来たんだ…!」

「慶夜…?!」

弟の姿を認めて安堵する夕夏と同時に、少女が戸惑いがちに賢夜と良く似た別人の名を叫んだ。

すると賢夜は、少し不快げに眉根を寄せた。

「随分と好き勝手やってくれたみたいだな…そんなに暴れたいなら俺と姉さん、二人で相手をしてやろうか」

「やだ…女の子相手に二人掛かりで相手するつもり?」