「…おねがい、だから…っ………みない、で…」

青年に向けて、哀願するように呟く。

怪我をしている彼に、助けて、なんて言葉は口に出せなかった。

だから、せめて見ないで欲しい。

すると更に秦が服の裾から素肌へ触れようとした――そのとき。

「やめろ!!」

秦に向かって怒声が浴びせられた。

「…!」

「……あ?」

不機嫌そうに眼を細めた秦は、振り返って青年を見下ろした。

「死に損ないが、俺の邪魔しようってのか」

青年はふらつきながら、壁を支えにしてやっと立ち上がった。

「その子を離せ」

力無く垂れ下がった左腕からは、まだ血が滴っている。

「…何か言ったか?」

「聞こえなかったか?それ以上その子に触るなって言ったんだ」

その言葉に、どきりと心臓が跳ね上がる。

相手を眼光で射殺すかのような様相の秦を、青年は真っ直ぐに見返した。