「晴海っ!!」

痺れで朦朧とする意識の中、夕夏の叫び声が彼方から聞こえる。

「あはっ…これで余計なことをごちゃごちゃ騒ぐ気はなくなった?何処かの誰かと同じで苛つくこと言うから悪いのよ」

(…何処か、の…誰か……)

「そういやあんた、良く見てみたらあいつに似てるじゃない…?」

(あいつ……誰の、こと…?)

「…まさかあいつ、それで陸を逃がしたんじゃ――」

「その子を放せ!その子は能力者じゃない、無抵抗な人間相手に、それ以上危害を与えるな!!」

晴海に気を取られている隙に、少女の束縛から逃れたらしい夕夏が声を荒げた。

少女はくすりと笑みを浮かべて、首筋を掴む掌に力を込めた。

「あは…お姉さん、邪魔したらこいつのこと、本気で殺しちゃうよ」

「やめろっ…!その子を殺したら陸は…!!」

「…こいつを殺したら、こいつに騙されてる陸だって目を覚ましてくれるでしょ?それに、この女が能力者じゃない…?」

少女は夕夏の言葉に疑惑の念を向けた。

自分は能力者、じゃない。

陸と出逢うまで、身近には能力者なんて殆どいなかった。

ましてや自分自身が能力者な訳がないのに、何故――

「…女の一方的な嫉妬は見苦しいな」