「確かに…私とあの子じゃ相手のほうが格上過ぎる」

夕夏は小さく舌打ちをすると、ちらりと晴海を振り向いて小声で囁いた。

「…晴海。私があの子を足止めするから、先に行ってうちの弟を呼んできてくれるかな」

「なぁに?内緒話?どぉせあたしに敵う訳ないんだからぁ、隠してないでさっさと陸を返して」

「そんなの、やってみなきゃ解んないだろっ?」

夕夏はちらりとこちらへ目配せして見せた瞬間、地面に向かって火球を数発撃ち込んだ。

「きゃっ…?!」

砂埃が巻き上がり、晴海と夕夏の姿を少女の視界から隠す。

「晴海!」

「う、うんっ…待ってて夕夏、すぐ戻ってくるから…!」

夕夏に背中をおされ、躊躇いつつも走り出した。

「っ逃げようったってそうはいかないんだからぁっ!!」

苛立った金切り声を上げた少女の全身から、緑色の光が迸る。

するとばちばちと音を立てて電流が立ち上ぼり、周辺の景色を半球状に取り囲んだ。

「雷…!?」

「あはっ!これで逃げらんないでしょ!!」

瞬間、慶夜が張った焔の結界を思い出した。

この雷の壁は、あの結界と同様のものだと直感する。