夕夏は少し自嘲気味に鼻で笑ってから、屈託のない笑顔を浮かべた。

「そういえば、賢夜はとっても背が大きいよね?」

口には出せなかったが、確か慶夜も彼と同じくらい上背だった。

賢夜と陸は同じ年頃らしいが、陸は然程背が高くないため賢夜の長身は特に際立って見える。

「炎夏出身の人間は普通、八ヶ国の中でも背が伸びる人種なんだ。だから賢だけじゃなくて、でかい奴が男女問わず多いんだよね」

「そう言われてみれば…」

生粋の炎夏生まれ、若しくは炎夏の血が入っている人々は皆、背が高い。

あの秦も例に漏れず、更にはその取り巻きの女の子たちもすらりとした長身痩躯の娘が多かった。

「なのに何でか、私は背が伸びなかったんだよねえ…弟たちばっかひょいひょいでかくなってさぁ」

夕夏は少し苛立ったように頬を膨らませた。

確かにこんな高身長の比率が高い環境下で育ったら、少し卑屈な物言いもしたくなるかも知れない。

「そういや陸の銀髪も珍しいけどさ、君の髪の色もなかなか珍しいね。赤茶色っていうか、何て言うのかな」

「そ、そうかな?」

「綺麗な色だよね。私なんか単なる真っ黒だもの、羨ましいよ」

「うちの母の家系が色んな人種の混ざってるみたいだから…それでこんな色になったんじゃないかな」

「そっか…やっぱり色んな国の血が入ってるほうが美人になるのかなあ」

「えっ?」

晴海が思わず歩みを止めると、夕夏は怪訝そうに首を傾げた。