「こんにちわ、晴海」

――開いた扉の向こうから明るい笑顔が現れて、晴海はつられて笑顔になった。

「夕夏さん、わざわざ迎えに来て貰って、すみません」

「夕夏でいいよ。敬語も使わなくていいからね?行こう、陸が待ってる」

陸の両脚は暫く安静が必要だということで、晴海だけあれから先に家に戻ってきていた。

しかし時折様子を見に行くと陸に告げたところ、一人では出掛けるなと強く釘を刺されたのだ。

自分が一人のときを狙って、秦が現れるのではないかと懸念してくれたようだった。

其処で、晴海の送り迎えを買って出てくれたのが夕夏だった。

こうして天地の診療所と自宅との間を行き来する際には、夕夏が迎えに来てくれることになった。

「私、小さい頃から妹が欲しかったんだ。だから君くらいの年頃の子とこうしてると、なんか嬉しいな」

晴海と並んで歩きながら、夕夏は嬉しそうに謳うような声で語った。

「わ、わたしも」

「晴海も?」

「うん…お姉さんが出来たみたいで、嬉しい。ずっと憧れてたの」

自分は、長女だから。

姉が出来る筈もない、叶うことは絶対にないことだと解ってはいたのだが。

こうして歳上且つしっかり者の夕夏の傍にいると、一時的とはいえ姉が出来たみたいな気分になれた。

「…何なら、お姉さんになっても構わないよ?背は私のが小さいけど」