緩くパーマをあてた茶色のロングヘアー。


ぱっちり二重の大きな瞳、生まれつきの長い睫毛。


白く透き通った肌に血色のいいピンク色の唇。


出るとこは出てる小柄な体型、それを纏う流行りの洋服。



――自分で言うのはおかしいかもしれないけど、私は可愛い方だと思う。


街を歩けばタレント事務所からスカウトされることも稀だし、中学高校と告白された数は多分50は優に越す。



パパが社長ということもあり、それなりに贅沢な暮らしをしてきた。



エステにネイル、旅行や買い物。1日に10万円分の買い物だってしたことがある。


恵まれてた。



よく幸せな家庭が借金や倒産で一気に崩れる、というドラマを目にするけど、まさかこんな自分が、自分の家庭が同じ目にあうなんて思ってもなかった。





パパの会社が、倒産…。未だに信じられない。





借金なんて、いつから抱えてたんだろう。いつから赤字だったの?いつから我慢してたの?


弱々しい昨日のパパの姿を思い出すだけで胸が痛む。


優しくて、大好きなパパ。



そんなパパを悲しい目にあわせるなんて、許せない。




だから昨日勢い余って『半年待って!』とか言っちゃったわけだけど…―





「何をすればいいんだー…?」




私は街中の橋の上で、走る車を眺めながら溜め息を吐いた。






パパの会社は、化粧品メーカーだ。


商品を考え、デザインやコスト、その他諸々の製作をしている。


それを消費者に売り出して、その売り上げが会社をよくも悪くも左右する。




パパが小さな小さな会社を、頑張って大きくして化粧品を売り出そうと企画して、その化粧品が売れに売れて、波に乗ってきてた。


って、ママが言ってた。





…って、そういえば私パパの会社のことあんまり知らないじゃん!



化粧品売ってるってことは知ってたけど、具体的に何をしてるのかさっぱり分からないし、会社に行ったのだって中学生の時好奇心で忍び込んだ以来だし。




……何も知らない。



パパが稼いだお金で好き勝手やってきたくせにパパの仕事がどんな風かも知らないなんて…私は何をやってんだ。




パパのおかげでこの服だって、バイトもせずに買えたし。大学にだって行かせてもらってるのに。



「ほんと、私バカだ…」



涙で歪む視界の中、ぼんやりと街を眺める。





やっぱり、私がパパを救いたい。


恩返しがしたい。



私だってもう迷惑はかけたくない。





何か…何か救う方法は……





『――唯一の希望だったトキワ商社にも断られたしな。』






あ、そういえばパパ、トキワ商社が希望だったとか言ってたな…。




トキワ商社って、確か、デパートをいくつも経営してる有名企業だったような…?