戦術組みを始めて10数分後。



《椿ちゃん、今すぐホテル出て左んとこ集合!今ば逃したら大変なこつになるけんダッシュで!》



ヒソヒソ声のピカ先輩から、電話という名のラブリーオフェンス。



《椿、今夜が勝負みたいばいコレ!》



《シッ!ゆっくんもーちょいヒソヒソで話してばい!》



受話器越しに聞こえる、ピカ先輩と行雲先輩のヒソヒソ声での言い合い。



何これ、いや、可愛いんだけどさ、嫌な予感しかしなくね?



「箱田先生ー、馬鹿の片割れから変な電話来てるんすけど、行った方がいいっすかね?」



「…あんアホ二人ん保護者やなお前は。まあいい、行ってこい。メンバーは固まりそうやし、戦術も私が詰めておこう」



箱田先生のゴーサインに、俺は泰ちゃんを見る。



「俺はパス。コソコソしよる先輩達は手が焼けるけん」



「ホントそれな。………ちょっと、行って来ます」



はぁ…明日から本選なのに、なんであの人達って緊張感ないのかな。



気苦労が絶えなくて、最近有ちん先輩にお勧めされた胃薬をポケットに突っ込み、ホテルからダッシュして出た。