秀吉キャプテンがふぅ、と小さく溜め息を漏らし、瞼を少し伏せる。



行雲先輩程にはふさふさしてないが、質のある長い睫毛が影を作って、ああ、この人綺麗だなって思う。



「由貴が選手を辞めたのは、俺の、この手のせいだ」



「なんで、キャプテンのせい?」



「去年のウィンターカップの時にいつもは入る3ポイントが、ゴールリングに通らなかった。痺れのせいでな。それを不審に思ったあいつら二人に、遂に、手のことがバレたんだ」



秀吉キャプテンの左手が、右手をがっしり掴む。



まるで苦虫を噛み締めるようなそんな顔、後にも先にも、あまり見ることは出来ないだろう。



「由貴は言った。自分がプレイするより、俺の3ポイントが決まる瞬間が好きだと。十六夜がコートを走り回る笑顔を見るのが好きだと。だから、約束した。インターハイの決勝戦へ必ず連れて行く。決勝点は、十六夜から受け取ったパスを、俺が決める、とな」



そうか。バスケが好きな由貴先輩だからこそ、秀吉キャプテンみたいなスタープレイヤーを潰したくない。支えたかったんだ。



「その約束を果たすため、十六夜とは、『幼馴染み』じゃなく『チームメイト』として接すると決めたから、皆、あまり俺達の関係を知らない。知っているのは御劔くらいだろう。無論、あいつがアメリカに行ってる時の出来事だから、手のことは知らない」



あー、あの人って意外とそういう周りの事情ぺらぺら話さないからな。聞いたことなかった。