いつのまにか辺りはもう真っ暗になっていて
誰一人としてこの公園に遊びに来る子供やカップルなんていない
でも一人だけ月の光に照らせながらこっちへと走ってくる姿が見えた

神山…

「おい!…お前…何してんだよ」
肩が上下に揺れながら私を強く抱きしめてくれた
私はその腕の中の温かさに冷たいものが頬に一滴落ちた

「学校にも行かねえで…心配させんなよ…」
私はなんか申し訳なくて神山の顔が見れずにいた
そんな私に溜息を零しながらも隣のブランコに腰をかけて
私が話そうとするまで待っててくれる神山…

「何があった…?」
いつもとは違う胸の奥底をくすぐられるような神山の声に
私は顔を上げて今まであった事を話そうとした

「流星先輩と未悠が抱き合ってて…」
私の頭の中はあの光景がくるくると回り続けていて
そのたびにぐっと胸が締め付けられるように痛いんだ…

私は話すときは相手の顔を見て話せとお父様に教えられたために
神山の方を向こうとして…

___ちゅ。

私はその一瞬時が止まったように見えてしまった
それでも何故か心地よくて私はゆっくり瞳を閉じた
神山はしばらくすれば私の肩を遠ざけるように押し返せば背を向けて…

「なんで反抗しねえんだよ…嫌なんだろ?」
「嫌じゃないよ…でもまだ分かんないんだ…」

私はこのむちゃくちゃな気持ちに訳が分からなくなってきていた‥
もう頭がパンクしそうで…

いつの間にか私はふらっとして誰かに支えられた…

「わたち…くんと結婚ちゅる!!」
「守ってほちい?」
「守ってくれりゅ?」
「おう…」

夢の中で小さな私は誰かと婚約までしていたんだ…
早いな…

でも私は今より幸せそうだった。
確かにみんな小さいころは初めてがいっぱいで何でもかんでもわくわくする…
けどそれより幸せで楽しそうで…

こんな時が全部続かないんだろうか…?

…気づけば私は今ベッドの中…
布団だけで十分暖かいのに、それよりももっと温かい神山の腕が
私の頭の下にあった…

そして右を見れば神山の顔が至近距離にあって
私の頬は今よりももっと熱をもちそうだった

「俺のプリン…」
「ぷっ…」
予想外の寝言に私は吹き出しそうになった
だってあのクールな神山がプリンって…

ギャップがありすぎて…

私は神山の頭をふいに触ってみた
そして「ありがとう」と心の中で呟いた。

まだ気づかぬここにある運命の恋
いつ動き出す…