「眩し…」

翌朝いつも通りに目を覚ませばむくっと起き上がり
部屋を出ればまたたくさんのお手伝いさんたちが笑顔で迎えてくれた

今日は珍しく神山がいた
そんなことに胸がわくわくしている自分がいて…

「今日は珍しく列に並んでたんだ…」
「悪いかよ…」

今日、私が座った席は神山の隣の助手席だった。

「てかなんでここに座ってんの?」
「仕事っぷりを観察しなきゃって思っただけ!」
神山はふてくされながらぶんっと少しスピードを上げて学校へと向かった

学校につけば車から降りてまず未悠の姿を探した…
校内を見回しても未悠がいない
いつもはすぐ見つかるのに…

「未悠…?」
私はなんとなく空を見上げた
その時、ふと屋上に視線が向けばそこに未悠が女の子に囲まれていた
今にも泣きだしそうな表情で…

そんな様子に耐えられず私は全力疾走すれば
屋上へと入ろうとした…

でも入れなかった…

それは…流星先輩が未悠を抱きしめていたから…
やっぱりでもショックではなかった。
でも少しだけ嫉妬と言う醜いものが心の奥底にあることに気づく

少しは流星先輩のことスキだったのかもな…
ふたりの様子を見ていれば未悠と目があった

「美月!…違うのこれは!」
「…!!」

未悠は私の方へ駆け寄れば肩をぐらぐらと揺らして必死に誤解を解こうとしたが
今の私に受け止めることはできなくて…

「ホントに!…」

私は未悠の腕を振り払えば行く宛先もなく走りだした…
時々溢れてくる涙をぬぐいながらやっとの思いで私が小さいころ
通い慣れていた公園へと来た

久しぶりに来た公園は少し変わっていた。
前まであった夏の日は涼しい日影が出来ていた木も今は切り倒されて
滑り台の近くにあった緑色のベンチももう風が吹くだけでぎしぎしと音を立てる

そんな中あまり変わっていないブランコに腰をかけては
ゆっくりと自分の足で前後に動かしてみた

春と言ってもまだ少し肌寒い
しかも学校の規則で今の時期は半袖に近い格好で
こんなとこに何時間もいたら風邪ひいちゃいそう…

私はゆっくりと目を閉じて小さなころお父様やお母様と一緒に来たころを
思い出していた…


ゆらゆら…ゆらゆら…

自分の足で漕いでいるだけなのに目を瞑るだけでお父様や…
数年前に不慮の事故でなくなったお母様も蘇ってくる

私は静かに涙を流していた
誰にも聞こえないように…静かに

天国にいるお母様にも心配かけないように…

静かに…泣いた…