「顔を上げなさい」


凛と響く芯の通った強い声。

私はその声に抗う術もなく、ゆっくりと顔を上げる。


「!」


想像以上に近い場所に立っていた王女は、私の顔を見て驚いたように大きく目を見開いた。


……そして、私もきっと彼女と同じようにこれ以上ないくらい驚いた顔をしていることだろう。


「本当に……、わたくしとよく似ていますのね」


驚きを隠せないような少し震える声でそう言ったクレア王女の言葉に、私はなんとか「光栄です」と答え、もう一度、頭を下げた。


私も、すぐには信じられなかった。

まさか、自分とこんなにもそっくりな人間がいるなんて。

ただの庶民の自分とはかけ離れた場所にいるはずのこの国の王女が、自分と同じ顔をしているなんて────。


『王女の身代わり』

その役目を言い付かった時点で、自分がある程度王女と似ているのだろうとは思っていたけれど。


まさか、ここまでとは思っていなかった。