どうして自分がここにいるのか。
どうして自分の隣に彼女がいるのか。
上手く状況を処理できないままここまで来てしまった。
ベッドで眠る彼女は、愛しい人の仇だ。
頭では分かっているはずなのに、実感がわかない。
あのどこか頼りなさげな少女がこの国の王女だなんて、サユを見殺しにした張本人だなんて。
あの後────、フレイに預けられた令嬢の正体を知った後、しばらくして雨が上がった。
それに気が付いたのも令嬢……、クレア王女の方が先で、まだ状況の整理が追い付かないままの俺に、「行きましょう」とニコリと微笑んだんだ。
笑った顔がサユにとても似ていたから、また胸が痛んで。
自分でも情けないことに、それからは何も話さないまま、彼女を守るという使命も頭からすっかり抜け落ちたまま歩き続け、気が付けば目指していた街に辿り着いていた。
この街に着いてからだって、状況は変わらないままだった。
クレア王女が「寒い」と言うから宿を取り、いつの間にか夕食を済ませ、彼女は「おやすみなさい」と微笑んでベッドにもぐりこんでいて。
そんな彼女につられるように部屋のソファに身体を沈めた俺は、少しの睡眠をとった今、ようやく状況を飲み込むことができてきた。
やっと、思考が動き始めてきたのを感じる。