-side:Kanon-


目を覚ますと、時計は深夜2時を指していた。

思ったよりもすんなり眠りについていたようだ。

規則正しい微かな寝息と時折聞こえる衣擦れの音が、静寂の中にやけにはっきりと響く。


……喉が乾いた。

目が覚めてしまったらどうしても喉の渇きが気になって、俺はベッドで眠る彼女を起こさないように身を起こし、窓際のテーブルに置いてある水差しから一杯の水をコップに注ぐと、一気に飲みほした。


「……んん」

窓際から自分が寝ていたソファに戻る途中、こもった声と共に寝返りを打った彼女に、起こしてしまったかと彼女のベッドの前で思わず足を止める。


しかし本当にただの寝返りだったようで、彼女は目を覚ます気配はなくすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。


ひとつ息を吐いて、俺は再びソファに身体を沈める。

安い宿の割には綺麗だし、ベッドのほうは知らないが、少なくともこのソファはなかなか寝心地がいい。


「……はあ」


ソファに横になって天井を見上げ、思わず吐き出したのは大きなため息だった。