「俺? 俺は、おまえの新しい雇い主」
「……」
何を言っているのだ、この男は。
そんな非難を込めて、思い切り男を睨む。
しかし男はフッと笑っただけで、怯む様子もなかった。
「そんなに睨むなよ。可愛い顔が台無しだ」
「……ふざけないで」
睨む瞳の強さは変えないまま、怒りを含んだ声で言い返す。
……私の主は、クレア姫ただひとり。
姫様以外に仕える気など毛頭ない。
こんなふうに私を捕らえているということは、おそらくこの男は姫様の命を狙っていた奴らの仲間。
────ミディリアナ様の仲間だろう。
「怖い顔をしたって無駄だよ。どうしたっておまえはもう、クレアのもとには帰れない」
……悔しさでどうにかなってしまいそうなのに。
冷たい声でそう言い放った男を、私はただ睨み返すことしかできなかった。
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