そうだ、私。
姫様を逃がそうとして、囮になって。
2人……、いや、3人だろうか、それくらいの人数は仕留められたはずだ。
とりあえず危機は脱したと判断した私は、姫様とカノンの後を追おうとして。
だけど、ふたりが走って行ったほうに駆けだす寸前。
すぐ後ろで、銃声のようなものが聞こえて、それで……。
「っ、」
その先を思い出そうとしても、何も思い出せなかった。
どうやらそこで意識を手放してしまったらしい。
だけど、一体どうして。
銃で撃たれたにしては特に痛みも感じないし、一応生きているようだし……、と。
そんなことを考えていたときだった。
「!」
キィ、と重い扉が開くような音が暗闇の先から聞こえてきて、驚いてびくりと肩が跳ねた。
どうやら、ここは思った以上に小さな部屋だったらしい。
扉の音はすぐ眼前のようにさえ感じた。
一筋の明かりさえなかった暗闇に一気に光が溢れて来て、思わず強く目を瞑る。
「……あぁ、起きたのか」
目をかたく閉じたままだった私の耳に、低い声が届いた。
ゆっくりと目を開けると、背の高い影が床に伸びている。
カツ、カツ、とゆったりとした足音が近づいてきて身構えたけれど、その足音は私の背後の壁際で止まり、そして気付けばそちらからも光が差し込んできて。
男は窓を開けただけのようだった。