「……ありがとう。必ず、帰ってくるね」


私の言葉に、カノンは大きく頷く。


くるり、身を翻し、ドアを開けた。


ガチャ、とドアの開く音と共に外の光が部屋の中に差し込んでくる。



「……じゃあ、行ってくるね!」



最後にもう一度、精一杯笑顔を浮かべた。


カノンの中の私が、いつでも笑っていられますようにと、願いを込めて。



─────一歩。


外に出た私の体は、ふわりと柔らかな風に包まれて。


パタン、と背後ではそんな爽やかな夏の風に押されて、ドアが閉まった気配がした。


……もう、振り返らない。


もう、後戻りなんかできない。


手放した愛しい人に再び巡り会えると信じて、私は前に進もう。




……ねぇ、カノン。


きっと、また逢えるよ。


カノンが変わらないと言ってくれたように、私だって絶対に変わらないから。


カノンを好きな気持ち。


一番大事だっていう気持ち。



……絶対に、また逢える。


そう信じていれば、いつかまた、幸せなふたりに戻れるよね────。