────パサ、と。
頑なに彼女の顔を隠していたフードが背中に落ちた。
彼女は俯いていた顔を上げ、伏せていた視線をゆっくりと持ち上げる。
瞬間、俺は言葉を失い、大きく目を瞠った。
もう二度とフレイを落胆させまいと思った。
何があろうとフレイとの約束を違(たが)えたりしない。
彼女が再びフレイと会えるまで、彼女の傍にいる。
彼女の正体なんて俺にとってはそれほど問題ではなくて、フレイに託された命だからこそ、守り切る覚悟を決めたのだ。
……だけど。
「サ、ユ……」
違うと分かっていながら、呟かずにはいられないほど。
別人であると分かっていても、こみ上げてくる懐かしい思いを抑えきれないほど。
俺の目の前でまっすぐな視線を向けてくる少女の顔は、愛しい人のそれと酷似していた。