ひとり残された広い部屋をぐるりと見回す。

上品に整えられた場所をとても綺麗だとは思ったけれど、まだまだ馴染めそうにない。

コツン、とヒールを鳴らして窓に近づくと、隙なく手入れされた庭が見えた。

ふう、とひとつ息を吐いて、私は部屋の奥に置かれた大きなベッドに腰を下ろす。





……今日からここが、私の居場所。


大好きな家族もいない。

どこより落ち着く、古い家にも帰れない。

頼れるものも、人も、なにもない。

全て故郷に置いてきた。


だけど、それでいい。

手放すことが名残惜しくなってしまうようなものは全部、早めに捨てておかなくちゃ。


いずれ私には、私にそっくりな王女の代わりにこの命を狙われる日が来るのだろうから。