「……」

去っていった王女の後ろ姿を見送りながら、私の心には苦い想いがこみ上げてきた。



高い位置で結い上げたブロンドのウェーブがかった艶やかな髪が、彼女の背中で揺れている。

腰をキュッときつく締めた綺麗なドレスを、きっと誰より優雅に着こなしている。

しゃんと伸びた背筋。

きれいな歩き方。

遠ざかる後ろ姿に、その細い身体が背負うには不釣り合いなほどの威厳が見えるようだった。

先程見せた儚さなど、その姿勢には微塵も感じられない。


「……素敵な方でしょう?」


思わず、クレア王女の後ろ姿に見惚れてしまっていた私にそう声をかけてきたのは、先程クレア王女だと教えてくれた侍女。

ハッとして侍女のほうを見ると、彼女はニコリと微笑んだ。


目が合って初めて、クレアとは違うタイプの美人だと気付く。


スッと通った鼻筋とつりがちの眉が、意志の強そうな印象を与える。


金や薄茶といった色素の薄い色をした髪や瞳を持つ割合が圧倒的に多いこの国では珍しい、濃いブラウンの長い髪に、同じ色の瞳。


……カノンと、同じ色だ。