「どうしたんですか?」
悩む俺に、凪沙が言う。
「いや、何でも…。」
だが、俺の心の影は、この夏の日射しが作る影のように黒くなるばかりだ。
「私ね。」
凪沙が言った。
「竜之亮さんとは、何年も前に会った気がするんです。」
「どういう意味?」
「何ていうか、こう、竜之亮さんといると、ほっとするような、懐かしいような…。」
「ん?」
「そんなわけないですよね。この学校に入るまで会ったわけないですよね。気にしないで下さい。」
こんな会話をしながら、俺達はバスの時間を過ごした。