その瞬間、俺の心に刺さった針が、蒸発したかのようにキレイに消えた。
「本当の気持ち」…。そうだ。何より大切なのは、真実なんだ。嘘を言った時には、その嘘が心に深く爪痕を残す。それとは少し違うかもしれないけど、早乙女凪沙として生まれたなら、凪沙の方が本物なんだ。だから、千華のことは、いつまでも深く、さっきの心の針がつけた溝に、うまく入れられるはず。
俺は、決めた。
「俺は―。」