「へぇー?どっちもほしいんだー?」

 突然、彼の声のトーンが明らかに変わった。なんだか怖い。背中がゾクリとした。
 Trick and Treatっていうことは、「イタズラとお菓子をあげる」という意味で合っているはずだ。
 どっちともあげると言われたから、どっちともほしいって答えた。
 おかしいところは何もないはずだけれど……。

「――ボクはね、小さい頃から“アイ”っていうものを知らないんだ。実の親に捨てられた身で、何がよくて何が悪いのか分からないんだよ」

 ……?
 急に自分の過去を語りだす彼。
 逃げたり言葉をさえぎったら、何か怖いことをされそうな気がしたので、黙ってその語りを聞いてみることにした。

「だからね、ボクからすれば、“イタズラ”も“お菓子”も同じなんだよ。わかる?お・な・じ」

 私にはよく分からないが……彼にはそう見えているのだろう。
 茶化す理由がない。