何か珍しいものを見たのか、柴おじちゃんは「おや?」と言って目を見開いた。



「あれは、加奈ちゃんと同じ学校の子じゃねぇか?」



 柴おじちゃんが私の後ろにあるあんず橋を指差した。

 朱色の手すりが美しい、小さいけれど丈夫な橋。そんな趣のある橋を、1人の男が不釣り合いなブレザー姿で歩いている。その顔には見覚えがあった。



「こっち来るみたいだなぁ。加奈ちゃんのボーイフレンドか?」

「違うよ」



 茶化すようにニヤリと笑う柴おじちゃんに溜め息をつきながら、私はキッパリと否定した。

 あの人は私のボーイフレンドとかじゃない。



「あれれ、そうなんかぁ」

「うん。あの人はね、ただのストーカー」



 竹箒の柄の先端に手を乗せて、その上に自分の顎を乗せた。柴おじちゃんは隣でキョトンとした顔をして、私とストーカー男を交互に見た。