「痛いよ、ばあちゃん…」

「ばあちゃんじゃない!タエさんとお呼び!」

「いだっ!」


 今度はぎゅうっと耳を掴まれた。その細っこい身体のどこにそんな馬鹿力があるんだ。

 タエさんは、ばあちゃんと呼ばれることをなぜか嫌がる。小学校に上がり立ての頃、「ばあちゃん、だっこして!」と駆け寄ると、今みたいに耳を引っ張られたことがあった。



「加代、私のことはタエさんとお呼び」

「なんでー?」

「それが私の名前だからよ」



 私の目線に合わせてしゃがんだ祖母の顔はすごく美しかった。ほっそりとした顔、スッと通った鼻筋、檸檬のようにキュッと目尻が上がった目。


 子供ながらに、この人は美しい部類に入る人だ、と納得した。