「ほんとに覚えてねぇのか?」
「……だからなに」
覚えてるもなにも……大輝の言いたいことがわかんねぇ。
俺は大輝に気を止めることなく、再び弁当に箸をつける。
「はあ……なんでこんなに無自覚なんだよ、翼は」
「無自覚じゃねぇ」
なにがかわかんねぇけど、無自覚ではないのは確かだ。
大輝はため息をつくばっかりで、結局くわしいことは教えてくれなかった。
……最後に、大輝はため息混じりにこう言った。
『自分の胸に手を当てて考えろ』
それだけ。
思わずなにも持ってない左手を胸に当ててみたけど、それだけでわかるはずもなく。