「こっちおいで」


そう微笑む彼は猫をかぶった黒豹。


その笑みは表向きのもので本当の彼が笑っているときはこんな顔はしない。




降参だ。



「わかったから。その顔怖い」

しぶしぶ彼が座っているソファーの近くに行く。


そしたら彼が指さした先は彼の膝の上で。




「ここ」



「断固拒否する」



「冷たいなあ・・・相変わらず。

 そんな拒否されちゃうと俺、拗ねちゃうよ?」







そういいつつも結局拗ねたことなんか一回もないくせに。



・・・私の前では。





「わかった・・・降参だから、一回手離して。

 皆見てるから」


なかなか離そうとしない彼の手を無理やり引きはがすようにすると彼の膝の上にしぶしぶ座った。


「おかえり」

そう耳元でつぶやく声は猛毒で。




「ただいま」

その声に嬉しくなると認めざる負えない私はきっともう毒に犯されている。