「まったく、正月くらい静かにさせろや」
山瀬はそう嘆き、ふらふらと課内を歩き始めた。
その時、刑事課の入口あたりでなにやら叫んでる声が耳に入った。
「誰か手、空いてませんか?」
山瀬は、声のする方へ近付いた。
立っていたのは、同じく刑事課の前田という男で、柔道三段と言われなくても柔道が強そうながたいをしている。
そして、30歳といわれても、誰もが疑うくらい老けていた。
「わし、手空いてるけど、どないしたんや」
「あ、山瀬さん。取り調べをお願いしたいんですが」
「あぁ、構わんよ。じゃあ書類用意しといてくれるか」
前田は「はい」と姿勢を正し、走っていった。