翌朝、まだ眠りについてから3時間しか経っていない安田を、民がたたき起こした。
「ちょっと貴方!ねぇ起きて下さい」
安田は、普段は寝起きが良い方なのだが、さすがに3時間しか寝ていないからか、眠たい目を擦り、真っ赤に充血した目で民を睨んだ。
「なんだってんだよ。店は休みなんだし、今日はゆっくりさせろよ」
基本的に土日休みのClubBellも、さすがに盆暮れ正月は休みをとる。
安田はそう言うと、布団に身を包み、民と反対側へ寝返りをうった。
民は鬼の形相で、そんな安田の布団を、勢い良く剥ぎ取った。
「もう!早くしないと、坊ちゃんが兵庫に帰ってしまいますよ!」
「なんだって!?」
安田は、慌てて跳ね起きた。
「どういうつもりだ?」
「いや、私もよく知らないんですけど、今部屋で支度をなさってますよ」
「おい、おまえ、もっと早く言えよ」
安田は、頭を掻きむしりながら立ち上がり、幸治の寝室へ向かった。
民はその後ろ姿に向かって、小さく溜息をつき、呟いた。
「何度も起こしましたよ」